うつ病退職で損をしたくなければ必ずこれだけはやっておけ!!【※100万円以上損するケースもあり】

ブラック企業の話題が日々ニュースを騒がせている昨今、うつ病などの精神疾患で休職を余儀なくされ、そのまま復職することなく退職するケースは年々増加しています。

うつ病で退職した場合、すぐには次の仕事を始められないことも多いでしょうから、経済的な問題が重くのしかかかってくることも多いでしょう。

また、お金の不安から、さらに病状が悪化してしまうことも珍しいことではありません。

そこで少しでもその不安を和らげるために、使える制度があればフル活用したいところです。

うつ病退職で損をしたくなければ必ずこれだけはやっておけ!!

うつ病での退職で損をしないために

うつ病での退職は、ほんのちょっとした知識が無いために、退職のしかたを間違えると、もらえるはずのお金がもらえなくなってしまうことがあります。

場合によってはその金額は数百万円~数千万円ということになることすらあります・・・。

ここでは、うつ病で退職するさいに将来的に大変な損をしないための方法をお伝えします。

 まずは「傷病手当金」

うつ病で休職した場合にまず最初に検討するべきは、健康保険の「傷病手当金」です。

傷病手当金は、病気やケガのために会社を休み、会社から十分な給料が受けとれない場合に支給されます。

傷病手当金を受給するための要件は以下の4つです。

  • 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  • 仕事に就くことができないこと
  • 連続する3日間を含み、4日間以上仕事に就けなかったこと
  • 休業した期間について給与の支払いがないこと

よって、うつ病で4日間以上連続して会社を休み、その間の給料が出ない場合には傷病手当金が健康保険から支給されます。

支給額は支給開始日以前の12カ月間の報酬の平均の3分の2です。(※厳密には細かい計算があるので、おおむねの数字と考えて下さい。)

また、休職期間中に会社から給料が出ても、この3分の2の額以下であれば、差額のみ傷病手当金は支給されます。

支給される期間は、支給開始日から1年6カ月です。

もしその間に復職した期間があったとしても、最初の支給日から1年6カ月後までが最長の支給期間となります。

傷病手当金受給中に退職する場合

傷病手当金受給中に、復職の見込みがなくそのまま退職する場合でも、条件を満たせば退職後でも最初の支給日から1年6カ月後を限度に傷病手当金の受給を継続できます。

退職後の傷病手当金受給の条件は以下の通りです。

  • 退職日まで被保険者期間が継続して1年以上あること
  • 退職日に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること

したがって、退職日の前日までに連続3日以上の労務不能期間があって、かつ退職日に出勤しないことが必要となります。

引き継ぎのために退職日の1日だけ出勤したとしても、退職後の傷病手当金は受け取れなくなるので注意してください。

なお、この労務不能期間には土日祝日等の公休日や有給休暇が含まれていても大丈夫です。

傷病手当金のその他の注意点

  • 退職後の健康保険の任意被保険者(※退職後も2年間を限度に、任意で退職前の健康保険に継続して加入できる制度)期間中に発生した傷病には傷病手当金は支給されません。
  • 退職後の傷病手当金受給中に、一度でも労務可能な状態となった場合、その後に再度労務不能となり、かつ1年6カ月間の支給期間が残っていても、支給は再開されません。

失業保険との関係

退職して後にもらえるお金としては、失業保険がまず頭に思い浮かぶかもしれません。

しかし、実際には失業保険をもらえる条件のひとつは、求職中であることなので、少なくとも労務可能でなければ受給することはできません。

よって、労務不能が条件の傷病手当金と、労務可能が条件の失業保険は同時にもらうことはできません。

なお、すぐに求職活動ができない場合でも、失業保険には「受給期間延長申請」という制度があり、病気・ケガ・出産・育児などで引き続き30日以上働くことができなくなった場合に最大3年間を限度として雇用保険の基本手当の受給期間を延長できます。

この申請をしておけば、病気が回復して求職活動ができるようになった際に、改めて失業保険の受給を申請できます。

障害年金という制度

在職中に発症したうつ病の症状が長びいて、傷病手当金も受け取れなくなり、求職活動もできないのであれば、障害年金の申請を検討しましょう。

あまり知られていませんが、日本の公的年金制度には65歳になったらもらえる老齢年金以外にも、被保険者が死亡した場合に遺族に支給される遺族年金、そして障害のために働けなくなった場合に支給される障害年金があります。

そして、この障害年金の対象にはうつ病を含む精神疾患も入ります。

障害年金を受給できる条件

障害年金を受け取れる条件は、以下の3つです。

① 初診日(初めてその病気やケガで病院に行った日)に国民年金や厚生年金保険に加入していること
② 加入していた保険制度の保険料を一定の基準以上納めていること
③ 障害認定日(初診日から1年6か月後)に一定の障害の状態にあること

よって、厚生年金保険に加入している在職中に、うつ病と診断されて、その日から1年6カ月たっても症状が重い場合には障害年金を請求できる可能性があります。

②の保険料については、

  • 初診日の前日において、初診日の前々月までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと
  • 初診日の前々月までの全加入期間中3分の1以上未納期間がないこと

となっています。

厚生年金保険に加入していれば保険料自体は会社が代わりに納めているため、初診日の前の前の月以前、継続して1年以上働いていれば、基本的に問題はありません。

それ未満の場合には、国民年金加入期間などもみる必要があるので、最寄りの年金事務所での確認が必要です。

なお、もし保険料の未納があり、上記の条件を満たさない場合には残念ながら障害年金の請求はできないので諦めるしかありません。

初診日という罠

障害年金を申請できる条件のうち、問題となりやすいのが

① 初診日(初めてその病気やケガで病院に行った日)に国民年金や厚生年金保険に加入していること

という条件です。

障害年金は「初診日」に加入していた年金制度へと請求することになっています。

在職中の厚生年金保険加入期間中に初診日があれば、障害厚生年金に、退職後の国民年金加入中に初診日があれば、障害基礎年金に請求をすることになるのですが、実はこの両制度には以下のような大きな違いがあります。

障害基礎年金
【支給される障害の重さ】
2級(※日常生活に著しい支障がある程度)以上
【年金額】
・2級で国民年金から約78万円程度+18歳未満の子がいればさらに加算
障害厚生年金
【支給される障害の重さ】
3級(※労働に支障あり)以上
【年金額】
・2級で国民年金から約78万円程度+18歳未満の子がいればさらに加算+厚生年金からも支給(※給与水準や厚生年金加入期間によって異なる)+配偶者がいればさらに加算
・3級でも最低保証額として厚生年金から約57万円(※国民年金からは支給なし)

つまり、支給される条件も、支給される額も圧倒的に障害厚生年金が有利となるのです。

ポイントは「初診日いつか」となるので、例えば在職中にうつ病は発症しても、病院を受診せずに、退職後に初めて受診した場合には国民年金の障害基礎年金しか請求できないということになります。

障害基礎年金と障害厚生年金の差額は、人によって異なりますが場合によっては100万円以上となることもあります。

10年受給すれば、1000万以上となるような分かれ目が、在職中に病院を受診したかどうかだけで決まる場合もあるということです。

なお、この病院は基本的には精神科・心療内科などである必要があります。

抵抗がある方もいるかもしれませんが、少しでも精神疾患の可能性があると思ったら在職中に一度は受診しておくべきでしょう。

障害年金のその他の注意点

精神疾患のうち、一部の傷病名は障害年金の対象とはなりません。
例えば適応障害、パニック障害などの神経症と分類される病名です。

対象となるのは、うつ病(気分障害)、そううつ病(双極性障害)、統合失調症などの精神病に分類される病名です。

なお、精神科や心療内科では受診しすぐには診断名がつかなかったり、適応障害などの神経症の診断名がつくこともありますが、その後も精神疾患の症状が継続し、傷病名がうつ病などに変わった場合でも、(※精神科ではよくあるとことです。)原則として最初に精神科や心療内科にかかった日が初診日とされます。

うつ病退職で損をしたくなければ必ずこれだけはやっておけ!!まとめ

ここまで見てきたように、うつ病などの精神疾患で退職する際には、やり方しだいで大きな金額を失ってしまうことになりかねません。

特に、障害年金については、一生を左右するような経済的な損失にもつながることもありますので、くれぐれも注意したいですね。

また、障害年金の請求は自分自身で行うのはかなり大変なので、下記のような書籍でしっかり勉強するか(※ネット上の情報は誤りや古いものも多いのでおすすめしません。)、請求を代行してくれる社会保険労務士に相談してみるのもよいでしょう。

精神科医による著書

改訂版 障害年金請求に必要な精神障害の知識と具体的対応

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これならわかる〈スッキリ図解〉障害年金